「組織セラピスト」とは
「組織セラピスト」は造語です。
元々はエドガー・H・シャイン先生の書籍で「組織セラピー 組織感情への臨床アプローチ」があり、この本は5つの心理療法の流派のセラピストと共に、組織の問題を各セラピストの療法によって解決を試みています。
ここから「組織の問題を心理療法を使って解決をする人」という意味で、私は「組織セラピスト」という表現を使っています。
私自身はブリーフセラピーという心理療法を使って日々カウンセリングを行なっていますが、同時に企業の講師、組織コンサルタントとして活動しており、その際にはブリーフセラピーを組織の問題解決に使っています。
ちなみに以前書いた記事で企業の研修企画を心理療法でやってみるとどうなるかについて書いています。
このように心理療法を組織の課題解決などに使っていくと、これまでと違う視点で問題解決への取り組み方ができるのではないかと思うのです。
実は以前は「組織セラピスト」という言葉は、
「働く人が『心理学』や『心理療法』についての知見を高め、マネジメントや仕事に活用できる状態
という定義で使っていました。
これはこれで大事だと思っているのですが、もう一つの意味として今回は、
「産業領域のカウンセラーが『個人』のカウンセリングのみならず、『組織
』のカウンセリングができるようになること」
として提案してみたいと思います。
産業領域のカウンセラーがもっと組織課題に取り組めると良いと思うこと
企業のカウンセラーというと、どのような人や役割を想像しますか?
多分、「従業員の悩みを聞く」ということが主なイメージだと思います。
もちろんそれはそうなんですが、もっとこんな場面でカウンセラーが活躍できると良いと思いませんでしょうか。
※ちなみにEAPサービスを提供している会社で、これから書くことを謳っている会社はあります。しかしながら実際にはこのような場面ではまだまだ使われていないことが多いのではないかと私は思っています。
①管理職に対して
・部下マネジメントについての話し相手として
→ある部下の対応で困っている(精神疾患などではなく「年上の部下」とか一般的な問題)場合に自分の頭を整理するための壁打ち相手としてカウンセラーとして関わる
→休職明けの部下への対応に困っている場合など。産業医や人事部などとは話していて方針はわかっているものの、どんな顔してあえば良いかとか、他の部下の不満などにどう対応するかなど、産業医や人事部に聞きづらい内容などの時にカウンセラーとして関わる
→自分では理解しづらい部下など「発達障害じゃないか?」などと思ったが、はっきりとはわからないなど、相談することが妥当かどうかもわからない時にカウンセラーとして関わる
→ハラスメントなどの問題の時など、自分がやっている行為がハラスメントかどうか判断がしづらいとか、部下が他の部下にハラスメントをしているように見えるが、判断がわからないや、どう関わればよいかわからないなどの時にカウンセラーとして関わる
重要!
上記の内容で大事な考え方は「どこまで管理職が知見を高めると良いのか?」といった議論が必要です。
復職対応とかハラスメントとか発達障害の部下の対応や、精神疾患や障害を持つ方への合理的配慮など、管理職が全てを把握するのではなく、管理職がすぐに確認できたり、一緒に考えることができる体制を作った方が良いのではないかと私は思っています。
管理職が全てをわかっていなくても、各種専門家が管理職をフォローできる状態を作ることが今後の組織運営には大事なことなのではないでしょうか
②人事部や総務部に対して
人事や総務業務の一部に専門家として関わる
→会社の施策の進め方に悩んでいる場合など
メンタルヘルス体制の構築などはもちろんのこと、他にも女性活躍推進や男性育休、ダイバーシティなどの施策を進める際にどのような順番で進めると良いのか、社員への訴求はどのようにすると良いのかなど専門家としての知見を提示したり、人事総務の方が自分の考えを整理するためにカウンセラーとして関わる
→研修や教育体系の構築の場合など
特にコミュニケーション系の研修などは、心理学や心理療法の知見が数多く使用されている。一方実はちょっと心理学や心理療法の知見を間違って使っている場合や、切り取りして使うために問題がある使い方になっている場合がある。そういった時に内容の良し悪しや、研修の設計などにカウンセラーとして関わる
→OJTトレーナーやメンターなどが自分の担当社員のことで悩んでいる時など
新入社員の担当をしているOJTトレーナーが、新入社員の状態で心配なことがある時に人事部に相談をする時があるが、人事部の方でも自信を持って判断できない時などに人事部がカウンセラーに相談することや、OJTトレーナーが直接カウンセラーに相談できるようにするなど、一次相談、二次相談先として関わる
→休職・復職対応、合理的配慮などの判断を行う場合など
管理職同様、産業医に相談することがしづらい時や、相談しても判断がつきづらい時、どう相談して良いかわからない時などにカウンセラーが関わる
重要!その2
ここでも大事な考え方は「どこまで人事部、総務部のメンバーが知見を高めると良いのか?」といった議論が必要です。
カウンセラーでなくても産業医でも良いと思うのですが、人事部や総務部の方は、もっと専門家を積極的に頼っていくことができると良いのではないかと思っています。
「人の問題」に関する外部リソースの使い方として、もっと産業領域のカウンセラーはできることが多いと思うのですが、私が知っている限りですが、まだまだカウンセラーは「社員の悩みを聞く人」としての役割に留まっているように思います。
産業領域で活躍するカウンセラーが「個人」と「組織」に関われること
いかがでしょうか。
ここまでもっとできること、について書いてきました。
私は40代になってからカウンセラーを目指し、カウンセラーとしての仕事を始めた人間です。
それからカウンセラーの方と会うたび、また様々な心理療法を学ぶたびに、「こういった方が企業に関わると、もっと組織が良くなるのではないか」
「こういった知見を企業が取り入れると、もっと組織が良くなるのではないか」
といった思いを何度もしました。
カウンセラーはもっともっと活躍できる人材だし活用できるぞ!といった想いのコラムです。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
少しでも共感してくださる方がいると嬉しいです。
それでは次回もよろしくお願いします。
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チェリッシュグロウ株式会社では研修及びカウンセリングサービスを提供していいます。ご興味がある方はこちらにお問い合わせください。
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